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システムエンジニアが陥りやすい心の病 - 「うつ病」からの職場復帰

前回:ITエンジニアが陥りやすい心の病

連載:第795回 ITエンジニアによる、うつからの職場復帰

 IT業界では、激務や過度のストレスから、心の病を患う人が急増していることは、前回述べました。心の病については、素直に上司に相談する。直属の上司の理解がない場合は、しかるべき部署へ(人事部など)へ相談する。または、産業医が居れば相談する。最後には、精神科や心療内科に一度行って見るなど、悩むだけではなく具体的なアクションを起こすことが重要となります。

 診断の結果、うつ診断を受け、職場を長期休暇出来たとして、では、職場復帰はどうすればよいのでしょう。ここにも色々難しい問題が潜んでいます。

 今回は、うつになってしまい長期休暇した後の職場復帰について、ケーススタディを紹介しながらより良い職場復帰について考えてみようと思います。

 前回と同様、とあるITエンジニアの実例を上げてみたいとおもいます。

ケーススタディ1:職場復帰談(システムエンジニア Nさんの場合)

 システムエンジニアのNさんは「うつ」診断を受け、1ヶ月の長期休暇に入ることになりました。直前までとてもたくさんの仕事を抱えていたのですが、「医師の診断書」の効力により、即、長期休暇に入ることになりました。引継ぎもままならない突然の休みでした。

 突然穴を空けてしまった事をNさんは初め心配しましたが、仕事と言うのは一時的には大きな穴であったとしても、それなりに穴が補填されます。Nさんが居なくても、重大な問題は起きませんでした。

 休暇を取る際、特別な手続きは全く必要なく、まずは溜まっている有休を消化する事になりました。有休は40日ほどあったので、これだけでも軽く1ヶ月以上休める計算です。

 Nさんは「ただ溜まってる有休を消化してるだけなんだ。」と割り切る事にして、とにかくゆっくりと自宅休養することにしました。家でごろごろしたり、ぼーっとしたり、本を読んだり、散歩したり。あまり考え事をせず気ままに過ごして、予定通り1ヶ月の休養を取り、更に余裕を持ってもう1週間ほど休みを取りました。結局、有休はほとんど無くなってしまいましたが、休職扱いにはならなかったので、給料が下がることはありませんでした。

 職場復帰は、前と同じ部署に戻される事になりました。これは本人の希望と、急激な変化はうつにとってよくないと言う人事側の配慮でした。

 最大のストレスの元となっていた保守対応の携帯電話を持つことがなくなり、同じ職場内であまり電話を取ることが無い席へ移動しました。初めの1ヶ月間は定時で帰る事を条件にしてもらい、しばらくはゆとりを持って仕事に復帰しました。

 仕事しながらも1ヶ月に一回、再発予防の為、定期的に通院しています。「月に最低でも一度の休みが取れ、気持ちに余裕が出ます。先生と定期的に経過を話すことにより、気持ちの整理が出来て客観的に物事がみれるようになってきました。」とNさんは語ります。

 長期休暇の理由については、必要最低限の人のみ知らされます。とても心配しくれる方が何名か居ましたので、病名を告げましたが、他の方は意外と長期休暇の原因を聞いてきません。これは意外なことでした。

 職場復帰して約1年間は、あまり重たい仕事を付けられずゆったりとした仕事のペースです。今までのように仕事が全てではなく、仕事も生活の一部でしかない、と考えられるようになりました。また、「無理そうだな」と思う仕事を事前に察知する能力が多少身についたと言います。

 長期休暇や「うつ」になったと言う事で、査定を下げられると言う事は全くありませんでした。ただし、昇進欲がなくなってしまったので、長期的に見れば給与水準は下がってしまうのかもしれません。しかし、昇進だけが人生ではないと割り切る事も大切だとNさんは語ります。

良い職場復帰とは

 良い職場復帰には、まず、急激に環境を変えない事が大切です。職場復帰と異動がセットになってしまうと、急激な変化に耐えられず、うつが重くなったり、再発してしまう可能性があります。

 大切なのは、職場を変える事が出来る実行権のある上司に、事情を理解してもらい、同じ職場に戻りつつ、仕事量を減らしてもらう事が大事です。また、原因となっていたストレス元はなるべく排除してもらった方がよいでしょう。同じ職場でしばらく慣れた仕事を行い、元の仕事量に戻ってきたところでもう一度上司に相談する事が必要だと思います。

 もし、話し合いの後、改善の無いまま、うつ症状が出る前と同じ仕事をさせられるようであれば、ここで初めて異動を考えるのが良いと思います。うつ症状が出る前の上司と話し、以前とどのように状況が変わったのか説明してもらう事により、留まるか、異動するべきかの判断材料になると思います。

 ここで話が通らないようであれば、産業医から話をしてもらったり、医師の診断書などを再び出してもらう事も必要かもしれません。残念ながら職場の体質と言うのはそう易々と変わるものではありません。

 最後の手段としては転職も可能ですが、自らの症状が良くなったのかどうか良く考えてから実行に移した方が良いと思います。

 うつによる長期休暇の取り方は大事ですが、良い職場復帰も大事で難しい事です。相談するべき相手と、時期を良く見極めてから復帰や異動をする事が大切と思います。仕事上のストレスからうつになってしまった方は、それなりの重要な情報を握っている(会社に取って手放したくない人材)のはずなので、そこを最大限に利用するべきだと思います。

 この記事のカテゴリは、ソフトウェア開発 です。
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